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野村誠の作曲法
カール・ベルグストローム=ニールセン
野村誠は1968年生まれの日本の作曲家。独学で作曲を学び、アジアのいくつかの大学で教鞭をとった後、現在はフリーランスの作曲家として生計を立てている。作風は多岐に渡り、室内楽、管弦楽、子どもやアマチュアのための作品などがあり、即興や新たに考案した記譜法を採用することも多い。以下は2005年7月に京都で、筆者が野村の自宅を訪ねたときのインタビューに基づく。
しょうぎ作曲
1999年からしばしば採用されている方法。しょうぎとは、日本語でチェスのこと。各奏者はそれぞれの色のペンを持ち、それぞれのアイディアを各自の自由な記譜法で楽譜化する。まず、最初のプレイヤーが自分のパートを作曲し、自分が思い出せるように記譜したら、再び自分の順番が回ってくるまで、それを続ける。次のプレイヤーは、それを聴いて新しいフレーズを作り、同様のプロセスを続けていく。記譜は各プレイヤーが後で思い出して再現できれば、他のプレイヤーに理解できなくてよい。 More about Shogi (English)
以下の例は、アマチュアオーケストラのための「しょうぎ交響曲第3番 開館」の一部。また、「自閉症者の即興音楽」についても参照。
「はないちもんめ」(1989)
この作品は2つのグループによって演奏される。まず、それぞれのグループは、言葉を使わずに音で相談をして、ある音楽のフレーズを作ります。また、言葉を使わずに各グループの代表を決めます。各代表者はステージの中央に集まり、じゃんけんをします。じゃんけんの敗者は勝者の音楽のフレーズを自分の楽器で真似をしなければいけません。そして、自分のグループのメンバーにそのフレーズを持ち帰り教えます。最後には、両グループの全員で、それを演奏します。
「踊れ!ベートーヴェン」(1996)
ガムランと児童合唱のための
冒頭と終わりは、完全に記譜された楽曲。中間部は演奏者が自由に組み立てることができる。ガムラン奏者は、他の音楽家とコラボレートして、この中間部として何かを事前に準備しなければなりません。
「りす」(2000)
楽譜に書かれた言葉を、箏の絃の上で書く(描く)ことで演奏する。調絃は演奏家に委ねられる。
「104台の鍵ハモ」(2003)
「私の真似をして」というやり方で指揮された作品。
1)動機が真似されたり
2)楽器の単音を指差してから演奏する。これを離れた距離から鍵盤のどこを押さえたのかを観察しながら真似する
どちらの場合も、指揮者の演奏が大雑把に真似され、結果として多様な幅を持つ演奏が共存する。このことを意図的にやっている。
「だるまさん作曲中」(2001)
オーケストラとのピアノ協奏曲
第1楽章 ソリストが止まったら、オーケストラのメンバーも止まらなければいけないゲーム。指揮者は、止まるのが遅れた奏者に退場を命じる。だるまさんが転んだのルールに従う。
第2楽章 劇の手法で様々なソロが現われる。詩的、リズミックな文章を、各奏者が自由に解釈して音に変換する。以下は、例
オーボエ:今、指揮者の指揮者の本名さんと、、とととと
クラリネット:でん、でん、電話で、話していて、していて、していて
チェロ:な~んか、面白い曲、な~んか、な~んか、な~んか
ティンパニ:と
ピアニスト(せりふで):なんだけど
フルート:野村さんに、作って、作って、作って、作って
ガムランオーケストラのための「せみ」(2000)
作曲家は楽譜を書いたが、演奏家は楽譜を見ずに、全てを口頭伝承で覚える。指示は、長さの伸び縮みする一連のシークエンスを与えたり、お互いに真似しあったりなどを含む。
「自閉症者の即興音楽」(2002・2004)
ヴァイオリン、クラリネット、チェロ、打楽器、ピアノのための
この作品は自閉症者の音楽療法の現場で、それぞれが自分のアイディアに固執している様子を見学してインスピレーションを受けたもの。しかしながら、この作品は健常のクラシック音楽の演奏家が演奏するために作曲された。日本語版と英語版がある。
スコアは主に言葉で書かれている。楽器の後に書かれた数字は、その楽器ごとのセクションの番号。しょうぎ作曲を参照。
2ページ目
Cl (1) と Vn(1):クラリネット奏者はロングトーンロ長調の音階の様々な音で。時々、スタッカートまたはノンスタッカートで、一つの音を素早く10回演奏する。これを繰り返す。例えば、[see illustration] ...
Perc (1):クラリネット奏者が始めるとすぐに、パーカッションでおしゃべりを始める。喋っている感じが表現できれば、楽器はどんな打楽器を使ってもいい。誰かに優しく話しかけるように演奏しなさい。政治家の演説のように演奏してはいけません。ときどき、沈黙。そうすると、チェリストがそこで音を入れて、音楽的な対話になります。
Vc (1):ピチカートで打楽器の真似をして対話します。時々アルコでグリッサンドしてもよい。
参考文献
TOFU Magazine 3rd issue Fall/Winter 2000/01
The Collision Issue, ISBN962-85491-3-8